東京高等裁判所 昭和31年(ネ)528号 判決
仮に藤巻哲士が、被控訴人佐々木の本件建物使用を知らず黙示的に承諾したものと認められないとしても、同被控訴人は、被控訴人佐藤の二女貴美と婚姻して以来、事実上右佐藤の家族と同様にあつて、右佐藤と共同で事業を経営していることは当審証人佐々木貴美の証言及び原審における被控訴人両名尋問の結果を総合して認められるところであり、この事実と、当裁判所に顕著な昭和二十年十一月当時、同被控訴人が本件建物を使用し始めた頃東京都における住宅払底の事情とを合せて考えてみるに、被控訴人佐藤が被控訴人佐々木に本件建物を使用せしめたことは決して右建物の賃貸関係における賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破るものとは解し得られないところである。しからば右事実を目して無断転貸であるとなされた本件賃貸借解除の意思表示は無効といわねばならない。
仮に被控訴人佐々木が、本件建物の二階裏六畳の間をワイシャツの仕上場に模様替したことについて、藤巻哲士の黙示的承諾がなかつたとしても、当審証人伊藤銀二の証言によれば、右模様替工事は、畳を取り外し、その跡に根太をしき、その上に板を張つたに過ぎず、建物自体には何等の変更なく、また取り外しも極めて簡単であることが認められるのであるが、この程度の改造工事は未だ賃借物の用途を変更したものとは認められないところで、もとよりこれを解約の正当事由となし難いといわねばならない
(大江 内海 古原)